目の前に拡がるのは、蒼天の空と、風に揺れる草花。そして、頬を撫でていく風。
大きな樹の木陰に腰を下ろして、ふわりとした風に靡いていく髪を押さえながら、ただぼんやりと空を見上げる。
時折風に乗ってふわっとしたいい匂いが鼻先をくすぐって。
その香りの持ち主が誰なのか解っているから、なおのこと安心感が満ちる。ふわふわとした高揚感の中、ゆっくりと目を閉じた。
と、不意に服が引っ張られる感覚を覚え、思考を戻した。
目を開け視線を向けた先、不思議そうな顔で此方を見つめてくる、ひとりの少女が、目に映った。
君と、空の下
「…き、蒼星石」
「あ、翠星石?」
服を引っ張る感覚と呼びかける声に、僕はようやくと反応を示した。その声に反応した翠星石が、やはりどこか不思議そうに、首を傾げた。
「「あ」、じゃないです。どうかしたですか?」
「いや、何でもないよ。ただ空を見てただけ」
そう言ってもう一度空を見上げる。
翠星石も変わらずと小さく首を傾げたあと、緩く空を見上げた。
少ししてからもう一度翠星石に向き直り、聞き返した。
「それで、どうかした?」
「あ!そうです!これです!完成したですよ!」
そう言って彼女が手にしたもの。小さく摘まれた花飾り。
薄く淡い色をした小さな紅い花が、靡いていく風にひらひらと揺れて。
「へぇ。綺麗にできてるね。…あ、そうだ」
「?」
再び首を傾げてくる翠星石に緩く微笑んで、「ちょっと貸して」と花飾りを預かって、そのまま、すぐ目の前まで近付いていって。
片手に摘んでいた花をそっと翠星石の髪に挿す。
淡い色を帯びた花が翠星石の栗色の長い髪によく映える。
「うん。かわいい」
心から思う素直な感想を、すぐ目の前にいる姉に届けて。
頬を少し紅く染めて見つめてくる姉に小さく微笑んで、髪に触れていた手を滑らせ、そのまま、翠星石の片手を取った。
手を繋ぎゆっくりと立ち上がろうとして、不意に、翠星石がぎゅっと指を絡めてきた。
「蒼星石」
「うん?」
「大好きです」
「うん。僕も」
翠星石が笑う。自分も笑う。
こんな時間が、いちばん幸せ。