「もう蒼星石なんか知らんです!!」


彼女は何かと人よりも並外れていることが多い。
例えばそれが純粋さならば、頑固さもまた人一倍なのである。


「…だったら好きにすれば」


普段は滅多なことでは喧嘩などしないのだが、これも常日頃ある気まぐれのひとつ。
彼女の気まぐれにいちいちつきあっていたら身が持たない。
だから喧嘩の腰は自分から折って、会話一切を遮断。彼女のほうから折れるのを待つ。

当然意地っ張りな彼女はそんなすぐには折れない。
時折こちらの顔色を伺ってはいても、話しかけては来ない。
そうなるとこちらも当然相手にすることはしないのだ。

どちらかが折れるまで続く、喧嘩中の独特な空気。
互いに頑として折れないと決め込むところは、流石に双子といったところか。


しばらくすると彼女は立ち上がり、そのまま部屋を出て行った。
やはり怒りが相当頭を巡っているのか、それともただ単に居づらいだけか。

何だか無性に腹が立ってきて、不貞寝するようにそのまま寝転がる。
寝転がってどれくらい経ったのか、静かな部屋に腹の虫が響いた。

小腹が空いたと思った矢先、とす、とあたたかいものが軽く頭に当たる。
頭を起こした途端、ずいっと目の前に小さな袋が差し出された。そしてその袋を持っている、翠星石。


「………これ」


視線は逸らしているが、その頬は紅く染まっている。


「……くれるの?」


訊けば、彼女はさらに顔を紅くして、その包みを押し付けてきた。
そのままそっぽを向いて背中を向ける姿は、恥じているからなのか。

包みの中身はクッキー。作り立てらしく、ほこほことしたぬくもりがあった。
なるほど、さっき出て行ったのはこれを作るためだったらしい。


仲直りのために?

わざわざ、作って?


「…ふっ」
「!? わ、笑うなです!」


ひねくれ者の彼女らしい不器用なやり方。
でも、それが嬉しい。

人一倍意地っ張りで、人一倍頑固で…
だけど人一倍心優しい彼女の気持ちが、ただ素直に、嬉しかった。




 Fin

 愛情表現で10のお題より 03. ひねくれ者で、不器用で
                       (蒼星石×翠星石)



君はきっと、僕以上に不器用