凝視した画面の中で、 自分の指の動きに合わせて動いていた人物がもう一人の人物に蹴り倒された瞬間、蒼星石の口から悲鳴のような声が漏れた。
画面に大きく表示される『Winner』の文字。
その称号を得た本人は嬉しそうに、そして自慢そうに笑ってみせた。


「…翠星石、強すぎ」


コントローラーを投げ出し、蒼星石は感心したように、もしくはあきらめたように呟く。
もう一人の少女こと翠星石は、満足そうに鼻を鳴らした。


「当たり前ですぅ」


くすくすと笑ったままだった少女は、ふと思いついたように短い声を上げた。
何事かと思うより先に、目の前にずずいと差し出される、コントローラー。
そう。再戦の申し込みだ。

しかしその何度目かの再戦を求めてくる翠星石に、蒼星石は心底嫌な表情を浮かべる。
それもそのはず。今度負ければ本日の連敗記録が二桁になってしまうからだ。

曖昧な返事を返しつつ、それとなく他のゲームを勧めてみるが、効果はゼロ。
きっぱりと首を横に振るだけで、断固として受け付けない。
…本当にこういうときは意固地な姉はまったくと言っていいほど聞かないのだ。


負け続けていることを認めないように、往生際悪くなおも抵抗する妹に、翠星石は一瞬だけ意地悪く笑ってみせる。
そしてそれ以上反論させないかのように、両掌でその体を正面から押し倒した。

床に敷かれた絨毯の上、背中から倒れ込んだ蒼星石の体の上に、重なるように翠星石の体が覆い被さる。
何、と訊ねる間もなく、目の前に見えるのは、悪戯じみた表情の消えた、嬉しそうに微笑む笑顔。


「翠星石はお姉ちゃんですよ?」


満面の笑みと共に伝う言葉に、驚いていた蒼星石の表情が、次第に緩む。
同時に、参りましたとばかりに両手を軽く上げて見せた。


「…降参です」


改めて、ことごとく痛感させられる。
夢の世界においても、現実の世界においても、
この少女にだけは敵わないということを、しみじみと思い知るのだった。




 Fin

 愛情表現で10のお題より 05. だって、笑うから
                    (蒼星石×翠星石)



多分君には、一生敵わない